このページの要点
- 慰謝料・解決金・財産分与・養育費は、名目ごとに条を分け、何に対する支払いかを書く。
- 期限の利益の喪失は条文で定めて初めて生じる(民法137条)。遅延損害金の利率は書かなければ法定利率による(同419条)。
- 違約金は賠償額の予定と推定される(同420条3項)。違反する条を特定し、1回の数え方を決める。「罰金」とは書かない。
- 禁止・口外の約束は目的・範囲・期間・例外を書く。清算条項は、含める請求と除く請求を書き分ける。
結論:金銭の名目を書き分け、払い方・違約金・禁止の約束の範囲・清算の範囲を、それぞれ具体的に書く
離婚協議書の金銭の条項のうち、養育費、財産分与、年金分割は項目ごとに別のページで扱っています。このページで扱うのは、慰謝料や解決金の支払い、分割払いの条項、違反したときの違約金、接触や口外を禁じる約束、そして最後に置く清算条項です。これらは、書き方が具体的でないと、いざというときに「何を違反と数えるのか」「いくら払うのか」「どこまでで終わったことになるのか」が決まりません。
離婚協議書の慰謝料の条項は、金額の欄だけを埋めて済ませがちです。しかし、実際に問題になるのは、金額よりも周りの条文です。分割払いが遅れたら残りはどうなるのか、遅延損害金はどう計算するのか、「違反したら○円」とした違反とは具体的に何か、職場や親族への連絡を禁じる約束はどこまで有効か、「これで全部終わり」と書いたときの全部とは何を含むのか。このページは、これらを条文の書き方として整理します。第三者を巻き込む示談書(不貞の相手方との示談など)の書き方は、このガイドでは扱いません。ここでは、夫婦二人の間の協議書に限って書きます。
結論を先に並べます。
- 慰謝料、解決金、財産分与、養育費は、名目ごとに条を分け、何に対する支払いかを書く。名目を混ぜると、一つが履行されなかったときの扱いが他の項目に波及する。
- 分割払いは、回数・期日・口座・手数料の負担に加え、期限の利益の喪失の要件と遅延損害金を書く。期限の利益の喪失は、法定の事由が限られているため(民法137条)、書かなければ生じない。
- 違約金は、違反行為を特定し、1回の数え方を決め、誰が誰に払うかを書く。違約金は賠償額の予定と推定される(民法420条3項)。「罰金」と書くのは避ける。
- 禁止・接触・口外の約束は、目的、範囲、期間、例外の四つを書く。相手方の私生活を過度に縛る条項は、公序良俗に反するとして争われる余地がある(民法90条)。
- 清算条項は、含める請求と含めない請求を書き分ける。養育費、年金分割、新たに判明した財産などを、一括の放棄に巻き込まない。
名目を書き分ける:慰謝料、解決金、財産分与、養育費は別の条にする
離婚に伴って支払われるお金には、名目がいくつかあります。名目が違えば、支払いの意味も、他の項目との関係も違います。協議書に金額だけを書き、名目が曖昧だと、あとで「その金額は何の分だったのか」が食い違います。
離婚に伴う金銭の名目と、書くときの要点
| 名目 | 考え方 | 書くときの要点 |
|---|---|---|
| 慰謝料 | 不法行為によって生じた精神的な損害の賠償。故意または過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者の責任(民法709条)、財産以外の損害の賠償(民法710条)に根拠がある。 | 何についての慰謝料か(離婚の原因となった行為か、離婚そのものか)を前文または条文で特定する。払う人・受け取る人・金額・払い方。 |
| 解決金 | 責任の有無を争わないまま、紛争を終わらせるために支払う金額に付ける名目。 | 何を解決する金額か(慰謝料の請求、その他の金銭の請求)を書き、清算条項との関係を明記する。 |
| 財産分与 | 婚姻中に築いた財産の清算。協議が調わないときは、離婚の時から5年以内に家庭裁判所へ請求できる(民法768条2項ただし書)。 | 対象財産と基準日、方法を書く。慰謝料と合算するかどうかを明記する。詳しくは別のページで扱う。 |
| 養育費 | 子の監護に要する費用の分担(民法766条1項)。 | 子のための支払いであり、慰謝料や財産分与とは別の条にする。詳しくは別のページで扱う。 |
慰謝料を財産分与の中に含めて定めるか、別に定めるかは、夫婦の合意で決めます。含める場合は、「財産分与として○円を支払い、これには慰謝料を含む」のように、含むことを文面で明らかにします。含めない場合は、財産分与の条とは別に、慰謝料の条を置き、清算条項で両者の関係を整理します。名目をまとめて「解決金」とするときも、何の分かを書いておきます。財産分与の条文の書き方は財産分与の書き方、養育費は養育費の決め方と書き方で扱っています。
慰謝料の支払いと、他の債権との相殺も、書いておくと食い違いを避けられます。民法509条は、悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務、人の生命または身体の侵害による損害賠償の債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができないと定めています。慰謝料を払う側が、別の貸し借りと相殺してよいのか、禁じるのか、一定の範囲で認めるのかを、協議書で明示しておきます。
分割払い:期限の利益の喪失、遅延損害金、入金の充て方
慰謝料や解決金を分割で払う場合、条文に必要なのは、回数、金額、期日、支払先の口座、振込手数料の負担に加え、遅れたときの扱いです。遅れたときの扱いが書かれていないと、遅れた月の分だけを請求するしかなくなります。
期限の利益の喪失は、書かなければ生じない
分割払いは、本来は払う側が期限まで払わなくてよい「期限の利益」を持つ仕組みです。期限は債務者の利益のために定めたものと推定されます(民法136条1項)。分割金が遅れたときに、残りの全額を一括で請求できるようにするには、「遅れたら残額を一括で支払う」という約束が必要です。民法137条が期限の利益を主張できない場合として挙げているのは、債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、担保を滅失・損傷・減少させたとき、担保を供する義務を負いながら供しないときの三つにとどまります。分割金の不払いは、ここに含まれていません。したがって、不払いによる一括請求は、協議書の条文で定めて初めて可能になります。
条文例第○条(分割払いと期限の利益の喪失)
- 甲は乙に対し、第○条の慰謝料として、金○円を、令和○年○月から令和○年○月まで、毎月末日限り、金○円ずつ、乙の指定する下記口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
- 甲が前項の分割金の支払を、○回分以上怠ったとき(又は未払の額が金○円に達したとき)は、甲は、乙からの催告を要せず、当然に期限の利益を失い、残額を直ちに支払う。
- 前項の場合、甲は、期限の利益を失った日の翌日から支払済みまで、残額に対する遅延損害金を、年○%の割合により支払う。
- 乙は、振込先の口座を変更するときは、変更の日の○日前までに、書面(電磁的方法によるものを含む。)で甲に通知する。通知が甲に到達するまでの間にされた従前の口座への振込は、有効な弁済とする。
回数・金額・日数・割合は、夫婦の合意に合わせて入れる箇所です。催告を不要とするか、一定日数の催告を要するとするかは、書き方で選べます。
遅延損害金の利率と、入金の充て方
金銭の給付を目的とする債務の不履行についての損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定めるのが原則で、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によります(民法419条1項)。法定利率は年3パーセントとされ、3年を一期として変動する仕組みがあります(民法404条2項・3項)。協議書に遅延損害金の利率を書かなければ、法定利率によることになります。現在の法定利率は、法務省の公表で確認します。
法定利率を超える割合を約定することはできますが、高すぎる割合は、公序良俗に反するとして争われる余地があります(民法90条)。利率を決めるときは、何を基準にその数字にしたのかを説明できるかを確かめます。また、遅延損害金をかける対象が、遅れた分だけなのか、期限の利益を失った後の残額全部なのかも書きます。起算の日が「期限の翌日」なのか「期限の利益を失った日の翌日」なのかでも、結果が変わります。
分割金の一部しか入金されなかったとき、その入金を遅延損害金と元本のどちらに先に充てるかも、書いておくと食い違いません。法律は、元本のほか利息と費用を支払うべき場合に、足りない給付をしたときは費用、利息、元本の順に充てるとしています(民法489条)。ただし、弁済をする者と受領する者の間に充当の順序の合意があるときは、その順序によります(民法490条)。協議書では、遅延損害金が生じている場合の入金の充て方を、合意として書けます。
違約金:違反行為を特定し、1回の数え方を決め、「罰金」とは書かない
協議書の中で、「この約束に違反したときは金○円を支払う」と書く条項は、離婚協議書の中でもよく見られます。接触の禁止、口外の禁止、支払の遅れなど、違反したときの金額をあらかじめ決めておくものです。民法は、当事者が債務の不履行について損害賠償の額を予定できること、賠償額の予定は履行の請求や解除権の行使を妨げないこと、違約金は賠償額の予定と推定されることを定めています(民法420条)。この仕組みにしたがって条文を作ります。
確認の問い違約金を書くときの四つの問い
何をすると違反になるのか。
「相手方に不利益となる一切の行為」のような広い書き方は、何が違反かが分からない。禁止する行為を、具体的に列挙する。
違反の「1回」をどう数えるのか。
同じ内容の連絡が続いたとき、それは1回か複数回か。継続している状態を、日ごとに1回とみなすと、金額が膨らみ、過大だとして争われる原因になる。
誰が誰に払うのか。
双方に同じ義務があるなら、相互に払う形にするか、一方だけにするかを決める。一方だけに課す理由があるかも確かめる。
違約金のほかに、実際の損害の賠償も請求できるのか。
違約金は賠償額の予定と推定される(民法420条3項)。実損害の賠償を別に請求する趣旨なら、そのことを明記する。
書き方の例(一般的な例) 違約金の書き方
違反の特定
理由「罰金」は刑罰の名称であり、私人間の約束で命じることはできない。合意の内容としては「違約金として支払う」と書く。「取り決め全体」ではなく、違反となる条を特定する。
1回の数え方
理由日ごとに加算すると、金額が過大になり、争われる余地が大きくなる。上限を置いて予測可能にする。
損害賠償との関係
理由違約金の性質を明らかにしておくと、追加の請求ができるかどうかが読み取れる。
金額の目安は、法律には定められていません。禁止の内容に比べて金額が過大であれば、公序良俗の観点(民法90条)から、その一部が争われる余地があります。金額の欄は、守らせたい行為の重さと、違反した場合の相手方の不利益に釣り合う範囲にします。
禁止・接触・口外の約束:目的、範囲、期間、例外を書く
離婚協議書には、離婚後の接触や連絡を禁じる約束、第三者への口外を禁じる約束、SNSへの投稿を禁じる約束などが入ることがあります。これらは、離婚後の関係を落ち着かせるための条項ですが、書き方によっては、相手方の私生活を過度に縛る内容になります。行き過ぎた縛りは、公序良俗に反する法律行為は無効とされる(民法90条)という点から、効力が争われる可能性があります。
禁止条項に書く四つの要素
目的
何を防ぎたいのか(嫌がらせの防止、子の生活の安定、プライバシーの保護など)を、前文または条文に書く。
範囲
禁止する行為を具体的に書く(連絡手段、訪問、第三者を介した働きかけ、SNSへの投稿など)。
期間
無期限か、一定の期間かを決める。離婚後の事情の変化を見込むなら、見直しの条件も書く。
例外
子に関する連絡、法令に基づく開示、裁判手続での使用、守秘義務を負う者への相談など、禁止から外す場合を書く。
四つのうち例外が書かれていない条項が、実際には最も問題になりやすい箇所です。
職場や親族、友人への連絡の禁止は、よく見られる条項の一つです。相手方の職場に嫌がらせの連絡をする、事実を広めて評判を傷つける、といった行為を防ぐ目的は理解しやすいものです。一方で、「親族や友人に事情を話してはならない」と広く書くと、自分の親族に相談することまで禁じることになり、範囲が過大です。「不当な働きかけ」「誹謗中傷」のような、目的に沿った行為に限って禁止する書き方が現実的です。
相手方に関わる調査(探偵の調査など)を禁じる条項や、交際相手などの第三者に対する接触を禁じる条項は、協議書の当事者が自分の行為として禁じられる範囲にとどまります。協議書の当事者でない第三者が、その協議書によって義務を負うことはありません。第三者を介した行為を禁じるなら、「当事者が第三者に依頼して行わせないこと」と書きます。
条文例第○条(接触及び連絡の約束)
- 甲及び乙は、離婚後、相手方に対し、正当な理由なく、直接又は第三者を介して、面会、電話、電子メール、メッセージアプリその他の手段による連絡を求めない。
- 前項の規定にかかわらず、甲及び乙は、子の養育、面会交流の調整、本協議書の履行に必要な連絡については、第○条(連絡の方法)に定める方法によって行うことができる。
- 甲及び乙は、相手方の勤務先、親族その他の関係者に対し、相手方の名誉又は信用を傷つける内容の連絡をしない。
- 前各項の規定は、法令に基づく開示、裁判手続における主張及び立証、並びに守秘義務を負う者への相談を妨げない。
- 本条の規定は、離婚の日から○年間、効力を有する。ただし、甲及び乙が書面で合意したときは、この限りでない。
禁止の範囲(第1項・第3項)と、例外(第2項・第4項)、期間(第5項)を一つの条にまとめた書き方の例です。子に関する連絡を例外にしておくことが要点です。
書き方の例(一般的な例) 過度に縛る条項と、整えた書き方
連絡の禁止
理由事情を話すこと全般を禁じると範囲が広すぎる。目的(名誉・信用の保護)に沿った行為に限る。
生活の制限
理由離婚後に相手方の生活を縛る条項は、目的が不明で、実効性もない。離婚の原因や子の養育と関係のない行動の制限は、協議書に書かない。
口外の禁止
理由例外のない口外禁止は、必要な手続や相談まで禁じる。例外を具体的に書く。
清算条項:どこまでを終わらせ、何を残すか
協議書の最後近くに置く清算条項は、「本協議書に定めるほか、互いに何らの債権債務がないことを確認する」という趣旨の条項です。協議書に書いた項目以外の請求を、これで整理する、という役割を持ちます。この一文は短いですが、含む範囲を読み違えると、後から請求できるはずのものまで請求できなくなる原因になります。
清算条項で、一括して放棄に巻き込んでしまいがちなものを、次に挙げます。
清算条項で扱いに迷う請求
養育費の将来の見直し
事情が変わったときの見直しは、子の利益に関わる。子の監護に関する定めは、家庭裁判所が必要に応じて変更できる(民法766条3項)。「一切の請求を放棄する」で包括すると、読み方が分かれる。
民法766条
年金分割
標準報酬の改定請求は、実施機関に対する請求で、期限がある。清算条項に含めるのか、除くのかを別条で明記する。
厚年法78条の2
新たに判明した財産
協議の時点で分からなかった財産が後で判明したときの扱い。含めるなら範囲を書き、除くなら再協議の条項を置く。
離婚前の婚姻費用
離婚前の別居期間の費用の未払い分。含めるのか、別に整理するのかを書く。
民法760条
第三者に対する請求
協議書の当事者でない第三者への請求は、この協議書では整理できない。
書き方の例(一般的な例) 清算条項の書き方
範囲
理由何に関する請求か(離婚に関する)と、除くもの(年金分割、養育費の見直し)を書く。除外が書かれていないと、含まれると読まれる可能性がある。
新たに判明した財産
理由含めるのか除くのかを決めて書く。除くなら、再協議の条項を置く。
清算条項は、他の条文との位置関係も大切です。清算条項より後ろに新たな義務の条文があると、「本協議書に定めるほか」が読みにくくなります。清算条項は、実体的な条項(支払い、禁止、年金分割など)のあとに置き、合意管轄や作成部数といった末尾の条項の前に置く形が整理しやすいでしょう。
前文と事実関係の書き方、そして時効
協議書の前文に、離婚に至った経緯をどこまで書くかも、悩ましい点です。事実関係をくわしく書くと、慰謝料の根拠が明確になる反面、書かれた事実の評価を巡って争いになることがあります。また、口外禁止の条項と、協議書そのものの扱いが矛盾することもあります。一般的には、慰謝料の根拠になる範囲に限って簡潔に書く、あるいは「婚姻関係が破綻したことを確認する」にとどめて、責任の所在には踏み込まない、という書き方が選ばれます。どちらを選ぶかは、慰謝料を支払う側が責任を認めるのか、認めないまま解決するのか、によります。
時効の整理もしておきます。不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき、または不法行為の時から20年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法724条)。一方、協議書で支払いを約束した場合、その支払請求権は契約にもとづく債権になり、債権の消滅時効は、権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年です(民法166条1項)。協議書を作らずに慰謝料の請求を後回しにすると、不法行為の請求権の期間が進みます。協議書がある場合の支払いが止まったときの整理は協議書を作った後に起きることで扱っています。
また、時効の利益は、あらかじめ放棄することができません(民法146条)。「支払いが何年遅れても時効を主張しない」と書いても、それは時効の利益のあらかじめの放棄に当たるため、条文の上では効力が認められません。支払いが遅れている債権の時効を止めたい場合は、後から承認をしてもらうなどの別の方法を考えます。
確認の問いと、起きがちなこと
確認の問い金銭の条項を書き終えたときの問い
慰謝料、解決金、財産分与、養育費の名目は、条ごとに分かれているか。
名目が混在していると、一つの不払いが他の項目に波及する。
分割払いが遅れたとき、残りの全額を請求できる条文があるか。
民法137条の事由に不払いは入っていないため、書かなければ一括請求の根拠がない。
遅延損害金の利率と、かける対象、起算日は書いてあるか。
書かなければ法定利率による(民法419条1項)。約定するなら根拠を説明できる数字にする。
違約金は、違反する条を特定しているか。「罰金」の語は使っていないか。
「取り決め全体」の違反とすると、何が違反かが決まらない。
禁止条項に、子に関する連絡や法令に基づく開示などの例外があるか。
例外がないと、必要な連絡まで禁じることになる。
清算条項は、年金分割や養育費の見直しを含むのか、除くのか。
含める趣旨が読み取れないと、後で食い違う。
書き終えたときの点検
- 慰謝料や解決金の条に、何に対する支払いかが書かれている
- 分割払いの条に、回数・金額・期日・口座・手数料の負担が書かれている
- 期限の利益の喪失の要件が、回数または金額で書かれている
- 遅延損害金の利率・対象・起算日が書かれている(または法定利率によると読める)
- 違約金の条が、違反する条を特定し、1回の数え方を決めている
- 禁止・口外の条に、目的・範囲・期間・例外がそろっている
- 清算条項に、除くものが書かれている
慰謝料・清算条項で起きがちなこと
- 分割払いの条に期限の利益の喪失が書かれておらず、数か月分が遅れても、遅れた分だけしか請求できなかった。
- 「取り決めを違反した者は罰金を支払う」と書いたが、どの取り決めの違反かが特定されておらず、違反の有無で食い違った。
- 違反が続く限り日ごとに違約金が加算されると書いたため、金額が過大になり、支払いを巡って争いになった。
- 職場や親族に連絡しないという条項が広すぎて、子の送り迎えに関する親族への連絡まで禁じる形になった。
- 清算条項に「一切の請求を放棄する」と書いたため、年金分割や養育費の見直しまで放棄したのかどうかが争われた。
- 遅延損害金の利率を書かなかったため、期限の利益を失った後の計算で、利率の根拠を巡って食い違った。
- 慰謝料の請求を協議書で整理しないまま離婚し、不法行為の請求権の時効の期間が進んだ。
金銭の条項は、一つ一つが具体的でないと、支払いが止まったときや違反が疑われたときに動かせません。書き終えたあとに、条文を「違反が起きた日」を想定して読み直すと、足りない記載が見つかります。協議書を公正証書にする場合に、これらの金銭の条項の何に強制執行を受けることを認める文言を付けられるかは、離婚協議書と公正証書の違いで整理しています。
よくあるご質問
慰謝料の分割払いが遅れたとき、残りを一括で請求できますか。
協議書に、遅れたときに残りを一括で支払う旨(期限の利益の喪失)が書かれていれば請求できます。書かれていなければ、民法137条が定める事由(債務者の破産手続開始の決定など)に当たらない限り、遅れた分だけを請求することになります。協議書には、遅れた回数または未払いの金額を要件として書き、催告を要するか要しないかも決めておきます。
協議書に「違反したら罰金」と書くことはできますか。
「罰金」は刑罰の名称で、私人間の約束で命じることはできません。違反したときの金額を決めたいなら、「違約金として○円を支払う」と書きます。違約金は賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。違反の対象になる条を特定し、1回の数え方、上限、損害賠償との関係を決めておきます。
離婚後の相手に、職場や親族へ連絡しないよう約束させることはできますか。
約束すること自体はできますが、範囲が広すぎると、公序良俗に反するとして効力が争われる余地があります(民法90条)。相手方の名誉や信用を傷つける連絡など、目的に沿った行為に限り、子に関する連絡や法令に基づく開示などの例外を書きます。協議書の当事者でない第三者を、その協議書で縛ることはできません。
清算条項を入れると、あとから何も請求できなくなりますか。
書き方によります。「何らの債権債務がないことを確認する」という一般的な清算条項は、協議書に定めた事項以外の請求を整理する趣旨ですが、含める範囲が読み取れないと食い違います。養育費の将来の見直し、年金分割、新たに判明した財産などは、含めるのか除くのかを明記します。
慰謝料の請求には時効がありますか。
不法行為による損害賠償の請求権は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効にかかります(民法724条)。協議書で支払いを約束すれば、契約にもとづく債権として、知った時から5年、権利を行使できる時から10年が基本になります(民法166条1項)。時効の利益はあらかじめ放棄できません(民法146条)。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の協議書への当てはめは、夫婦の事情や子の状況によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の夫婦や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 裁判所 / 日本年金機構